先日お友達になった男性が、どうやらこの人Mっぽいわねぇと思って突っ込んで聞いてみたところ、「僕の理想の恋愛は、『痴人の愛』なんです」と白状してくれたわ。いいわねぇ。モロに私の好みのど真ん中よ。
え、『痴人の愛』を読んだことのない人がいる? いやだ、谷崎潤一郎の代表作くらい、押さえておきなさいよっ。ちなみに私は高校時代からのファンで、今でも好きな作家を聞かれたら、真っ先に谷崎の名前をあげております。では、読んでいない方のために、粗すぎる粗筋をば。
サタデー·ナイト·フィーバー映画のオーディオクリップ
主人公の譲治はカフェで見つけた少女ナオミを引き取り、養育し、やがて夫婦になるのだが、ナオミが陰で複数の男と関係し「ヒドイ仇名」までつけられていることが発覚すると、怒って彼女を追い出してしまう。しかしふらりと戻ってきたナオミはいっそうたくましく美しく、譲治は彼女に屈服し、その浮気を黙認しながら夫婦生活を続けてゆくのであった、マル。
で、そのお友達、仮に氷川さんとしておきましょう。氷川さんは実際に、行くあてのない若い女の子を、マンションは無理だからアパートに囲って、「私は浮気をしまくるけれど、あなたは私だけを好きでいなさい」と言われて暮らしていたんだとか。
ジェニファー·アニストンとヴィンス·ヴォーンは分割ですか?
「あのころはいくら稼いでも足りなくて、借金までして大変だったけど、楽しかった」
と、氷川さんは当時を振り返る。彼だってもちろん、惚れた女に浮気をされたら胸が痛むのでしょうけれど、その痛みが、たまらなく甘美なものだったに違いないわ。そう、鞭や蝋燭なんて、目じゃないくらいに。「理想の女性が現れたら、またそういう生活をしたい?」
そう尋ねてみると、氷川さんは静かに首を振った。
「自分は女で身を持ち崩すタイプだって分かってるんで、最近ではきれいな女性には近づかないようにしています」
daedelus彼は誰でしたか?
なるほどね。まともな社会生活を送るには、そのほうが幸せだと、私も思うわ。でも、彼の本当の幸せは、そんなものなのかしらね。
■坂井希久子(さかい・きくこ) 31歳。和歌山県出身。同志社女子大卒業後、通販会社勤務などを経て2005年に上京し、都内某所のSMクラブで女王様となる。そのかたわら小説家を志し、09年に「第88回オール讀物新人賞」を受賞。鞭とペンを巧みに使い分け、独自の世界観を打ち立てようとしている。
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